Colloquium

準定常状態における相図と三重臨界点

小川 駿

1月21日(金) 13時30分

ハミルトン平均場モデルの準定常状態[AC]はLynden-Bell統計を用いて予測され, それに基づいて非平衡相転移が調べられている. 非平衡統計物理学で得られた結果は, 2次相転移, 1次相転移を起こす領域ではN体計算の結果と質的には無矛盾である[AA]. しかし, 三重臨界点付近では統計理論からは予測されない, 再秩序化現象が起きることが知られている[FS].

先行研究では3元の2重積分を含む非線形連立方程式を解くことにより, 相図が描かれていたが, これが数値的にであってもも難しいために点毎にしか秩序-無秩序の判定がなされていなかった. そこで, 発表者は, 連立方程式を秩序変数で展開し, 1変数の方程式を解く過程に分解することにより, ランダウの疑似自由エネルギーを構成し先行研究と無矛盾な相図を得た. この手法により, 3重臨界点と2次相転移線を与える正確な方程式が得られたので, これらの位置をより精度良く求めることができるようになった. さらに, 3重臨界点付近でN体計算を行うことにより, 非平衡統計力学からは予想されていない再秩序化現象をより詳細にしらべ, この再秩序化現象を再解釈することを試みる.


参考文献
[AC] A. Campa, et al., Phys. Rep. 480, 57, (2009)
[AA] A. Antoniazzi, et al., PRE 75, 011112 (2007) and PRL 99, 040601 (2007)
[FS] F. Staniscia, et al., PRE 80, 021138 (2009)