Colloquium

長距離相互作用系におけるCarnotの定理

森山 慧

12月17(金) 13時30分

Carnotの定理によって,熱機関の最大効率が気体の種類や系のサイズに依らず2つの温度のみで決定されるという普遍性が示された. 通常の熱力学の枠組みでは,この定理の証明に熱や内部エネルギーの相加性や示量性が仮定されている[1]. しかし,重力相互作用やクーロン相互作用などの長距離相互作用が働く系では内部エネルギーに非示量性があり,この仮定が満たされない. ただし,仮定が満たされないことは定理の主張が成り立たないことを意味するわけではないので,シミュレーションによって長距離相互作用系でもCarnotの定理が成り立つのかどうかを確認したい. 今回は3次元空間でクーロン相互作用する粒子が閉じ込められたピストン系の分子動力学シミュレーションで計算した熱効率を示す.

参考文献:
田崎晴明,"熱力学ー現代的な視点から",培風館,2004