Colloquium

球面振り子の陽的シンプレクティックインテグレータ

荒川 裕太

12月2日(木) 13時30分

シンプレクティックインテグレータはハミルトン系を数値積分するアルゴリズムで,シンプレクティック 2-form を厳密に保存するという性質を持つ. よく知られているものでは,Yoshida[1] のインテグレータがある.これはハミルトニアンが H = T(p) + V(q) の形に分離可能な場合にのみ使える陽的なアルゴリズムである. 一方で,上記の形に分離できないハミルトニアンに対しては陰的なアルゴリズムが存在する. 陰的なアルゴリズムは時間発展のステップごとに方程式のゼロ点を求める必要があり,陽的なアルゴリズムに比べて複雑になっている. そこで,一部の分離不可能なハミルトニアンに対する陽的なアルゴリズムとして,Chin[2] のインテグレータが考案された. 今回はこの Chin のインテグレータをベースに球面振り子の陽的シンプレクティックインテグレータを構成し,陰的アルゴリズム・陽的アルゴリズムの二つの方法で数値計算した結果をご覧いただく.

参考文献:
[1] H. Yoshida, Recent progress in the theory and application of symplectic integrators, Celest. Mech. Dyn. Astron. 56, 27 (1993).
[2] S. A. Chin, Explicit symplectic integrators for solving nonseparable Hamiltonian, Phys. Rev. E 80, 037701 (2009).