Colloquium

摂動付きMIC-Kepler問題の解析

松本 昇吾

7月9日(金) 13時30分

今回のコロキウムは二本立てである.
 前半は、球面振り子が持つ幾何的構造をコンピュータ上に可視化したもの を紹介する.球面振り子は質点が球面に拘束され、鉛直下向きに重力が働い ている系であり、自由度2の可積分系である。すなわち、ポアソン可換で互 いに独立な保存量が2つある。この2つの独立な保存量の逆像を考えると、 ある条件下で3次元射影空間の中に2次元トーラスが積み重なる葉層構造が 現れることが数学的に証明されている。この様子をコンピュータ上で可視化 することに成功したので、その結果を紹介する。
 後半は、摂動付きMIC-Keplerについて述べる.MIC-Kepler問題はKepler問題 の拡張であり,磁気単極子まわりの質点の運動を記述している.MIC-Kepler 問題はconformal Kepler問題を簡約化することによって得られる[1]ことが 知られており,conformal Kepler問題と4次元調和振動子との関係から,エ ネルギーが正,負,0それぞれの場合についての,MIC-Keplerの対称性群を 導くことができる.conformal Kepler問題に,元の対称性を崩さないように 摂動を加えると,その摂動は等エネルギー軌道空間(MIC-Kepler問題におけ る等エネルギー曲面を軌道で割った空間)の上の力学系を定める.コロキウ ムでは摂動付きMIC-Kepler問題の紹介と,今後の展望について述べる.

[1]T.Iwai and Y.Uwano, The four-dimensional conformal Kepler problem reduces to the three-dimensional Kepler problem with a centrifugal potential and Dirac's monopole field. Classical theory, J. Math. Phys. 27, 1523(1986).
[2]T.Iwai, A dynamical group SU(2,2) and its use in the MIC-Kepler problem, J. Phys. A: Math. Gen. 26, 609(1993).