Colloquium

平面多体力学系の簡約化と相対的平衡

熊谷 充敏

6月4日(金) 14時00分

平面n体問題において,すべての質点がお互いの相対位置を変えずに質量中心のまわりを回り続けるとき,その解のことを相対的平衡と呼ぶ.一方,力学系に対称性があるとそれに対応した保存量が存在する.そして,それによって系の自由度を減らすことができ,これを力学系の簡約化という.
本研究では,この力学系の簡約化の理論を用いて,相対的平衡の持つ性質を明らかにする.面n体問題で扱う系には回転対称性があるので,Noether の定理から系の全角運動量は保存されることが分かる.この保存量を用いて力学系の簡約化を行うと,その定義から,相対的平衡が簡約化された相空間上で平衡点になることは明らかである.(実はその逆も成り立つ,すなわち任意の平衡点は相対的平衡になることもわかる)
今回は,n=3 の場合に限り,その平衡点まわりでの線形化方程式を考えることで平衡点の安定性解析を行った.そして,線形化で得られる固有値に対する固有ベクトルを初期値とする解の位置成分を,簡約化する前の配位空間に戻すことで,その固有ベクトル(を初期値とする解)の幾何学的意味を明らかにした.

[参考文献]
[1] Gareth E Roberts, Spectral instability of relative quilibria in the planar n-body problem ,Nonlinearity 12(1999)757-769
[2] T.Iwai, ``A geometric setting for the quantum planar n-body system, and a U(n-1) basis for the internal states'', J.Math.Phys.,29,1325--1337(1988)