Colloquium

長距離相互作用するハミルトン系の準定常状態の安定性

小川 駿

4月30日(金) 13時30分

長距離相互作用する大自由度ハミルトン系は, 初期状態から"激しい緩和"を経て準定常状態に長時間とどまり,有限N効果によって平衡状態へ緩和していくことが知られている[2],[5].
今回は長距離相互作用系を通常の統計力学で扱う際に生じる問題点を簡単に解説した後, 準定常状態のみに着目し, 主にハミルトン平均場モデル(HMF)に関する準定常状態の統計力学的な性質とVlasov方程式の定常解としての性質を紹介する.
空間一様な場合の準定常状態の安定性については, 既に簡単な形の判別式が知られているが、空間非一様な場合の安定性はまだ分からないことが多い.
まずは、よく知られている空間一様な場合の安定性の基準[5]について解説し, 最近出てきた空間非一様な場合のいくつかの形式的安定性を紹介する[3].
そこからHMFについて準定常状態がLynden-Bellの理論に従うとした場合の分岐[1]との関係について出来るところまで紹介したい.

[参考文献]
[1] A. Antoniazzi et. al.,Phys. Rev. Lett., 99, 040601, (2007)
[2] A. Campa et al., Phys. Rep. 480, 57, (2009) 
[3] A. Campa, P. H. Chavanis., arXiv:1003.2378v1, (2010)
[4] D. D. Holm, et. al., Phys.Rep., 123, 1, (1985)
[5] Y. Y. Yamaguchi et al., Physica A, 337, 36, (2004)