Colloquium

佐藤一宏

情報理論的制約を考慮した制御理論

11月6日(金) 13時30分

制御対象をコントローラーによって制御するには通信路を介すが、 従来の制御理論ではシステムの数学モデルが複雑になることから、情報理論的な制 約を無視してきた。例えば、携帯電話やインターネットなどは、通信路における「情 報の伝達」には情報理論、「情報の利用」には制御理論というように、情報の伝達 と利用を異なる理論の枠組みで扱っている。
しかし、近年通信技術の進歩に伴い、有線、無線の様々な通信路を介した遠隔制御 のアプリケーションが現れてきており、情報理論的な制約を無視できなくなってき ている。例えば、人間から非常に離れたロボットを遠隔制御しようとする場合、情報 理論と制御理論を別々に適用していたのでは、本来の性能を十分に発揮するのは難 しい。このようなことから、情報理論と制御理論を融合させた、よりサイバネティッ クスに近い理論を構築する必要がある。
そこで我々は情報理論と制御理論を融合させた理論の構築に取り組む。まず我々 は連続時間で動作する制御対象を離散時間で動作するコントローラーによって制 御するサンプル値制御問題を考える。今回の発表では制御対象とコントローラー の間に情報理論的制約を考慮したサンプル値制御問題を定式化し、(恐らく)未解決 な問題を提起する。また。参考文献 [2] によって明らかにされた情報理論的制約を 考慮した制御理論の成果を一部紹介する。
参考文献
[1] K. J. Astrom, “Introduction to Stochastic Control Theory”, New York:Academic, 1970.
[2] J. H. Braslavsky, R. H. Middleton, J. S. Freudenberg, “Feedback Stabilization Over Signal-to-Noise Ratio Constrained Channels”, IEEE Trans. Autom. Control, Vol. 52, No.2, Aug.2007.
[3] T. M. Cover, J. A. Thomas,“Elements of Information Theory, 2nd ed.”, WILEY, 2006.
[4] Y. Yamamoto, “New Approach to Sampled-Data Control Systems: A function space method”, in Proc. 29th CDC, 1990, pp. 1882-1887.