Colloquium

佐藤寛之

行列多様体上での最適化

10月23日(金) 13時30分

制約なしの最適化問題に対する手法と,制約付きの最適化問題に対する手法は,一般には異なる. たとえば,制約なしの最適化問題に対しては,直線探索法という簡明な方法があるが, これは制約付きの最適化問題では一般には用いることができない. ところが,問題の制約条件によって定義される空間が多様体である場合, その問題を多様体上での制約なしの最適化問題と考えることで,直線探索法を用いることができるようになる. しかし,普通は直線探索法はユークリッド空間上での手法として確立されているので,それを多様体上に拡張する必要がある. 以上を踏まえて,今回は,実行可能領域が多様体である場合に最適解を求める有効な方法として, ユークリッド空間上での直線探索法を拡張したものを紹介する. また,具体例として,目的関数をレイリー商とし,実行可能領域をスティーフェル多様体とした場合や グラスマン多様体とした場合の最適化手法を紹介し, 微分幾何的な視点を持って最適化問題に取り組むことの有用性を述べる.
参考文献
[1]P.-A. Absil, R. Mahony, R. Sepulchre, Optimization algorithms on matrix manifolds, Princeton : Princeton University Press(2008)
[2]A. Edelman, T.A. Arias, Steven T. Smith, The geometry of algorithms with orthogonality constraints, SIAM J. Matrix Anal. Appl. (1999)
[3]福島雅夫「数理計画入門」, 朝倉書店 (1996)