Colloquium

ハミルトン形式での繰り込み群方程式

佐藤 寛之

5月15日(金) 13時30分

 微小なパラメータを含む常微分方程式に素朴な摂動法を用いると、得られた摂動解は、絶対値が時間と共に大きくなる永年項を含むことがある。 そこで、永年項を消去するために様々な特異摂動法が提案されてきた。そうした特異摂動法のうち、繰り込み群の方法と呼ばれるものがある。  従来の繰り込み法では、繰り込み群方程式が一意に定まらないという不定性がある。また、自励ハミルトン系においては、 解が長時間エネルギーを一定に保つように繰り込み群方程式がハミルトン系であることが望ましいが、定義の仕方によってはハミルトン系にならない繰り込み群方程式もある。  今回の発表では、こうした問題を解決するために提案した新たな繰り込み法について、簡単な例を用いて説明する。 また、この繰り込み法に関して以下の一般的な性質を証明したので、それらについても紹介する: i)全ての永年項を消去する繰り込み群方程式が、不定性を残すことなく自然に導ける。 ii)1自由度の調和振動子に摂動ポテンシャルが加わったとき、繰り込み群方程式は微小パラメータの2次のオーダーまでハミルトン系である。 iii)多自由度の調和振動子系にポテンシャルとは限らない一般的な摂動が加わったとき、繰り込み群方程式は微小パラメータの1次のオーダーまでハミルトン系である。