Colloquium

摂動ハミルトン系の繰り込み群方程式を導くHamiltonian

佐藤寛之

1月16日(金) 13時30分

前回の発表では、1自由度の摂動Hamilton系に対する素朴な摂動解を求めた後、 そこに現れる定数部分を変数と見なし、Taylor展開を考え ることで構成した1階の微分方程式が繰り込み群方程式であると紹介した。この方 法では、摂動部分の微小パラメータの2次のオー ダーまで考えると、2階の微分方程式も同時に要請される。そこで、繰り込み群の 方法がconsistentであるためには、この変数が繰り込み群 方程式を満たすとき、この変数に対して要請される2階の微分方程式をも満たして いる必要がある。今回は、こうした意味での繰り込み群の 方法のconsistencyを確認する。
また、前回は、伝統的な摂動論として正準変換摂動論を紹介し、そこで構成さ れるHamiltonianと、繰り込み群方程式を導くHamiltonian が、微小パラメータの1次のオーダーで一致することを示した。今回は、繰り込み 群方程式が微小パラメータの2次のオーダーでHamilton系 となるための条件を導いた上で、その条件が満たされるときに、正準変換摂動論 と繰り込み群の方法のそれぞれで得られるHamiltonianを比 較する。
さらに、考える系が多自由度の場合でも、摂動部分の微小パラメータの1次のオ ーダーまでは、1自由度の場合で得られた結果と同様のこ とが成り立つことを示す。

参考文献:
[1]L-Y. Chen, N. Goldenfeld and Y. Oono, Renormalization group and singular perturbations: Multiple scales, boundary layers, and reductive perturbation theory, Phys. Rev. E54(1996), 376.
[2]Y.Y.Yamaguchi, Y.Nambu, Renormalization Group Equations and Integrability in Hamiltonian Systems, Prog. Theor. Phys. 100 (1998), 199.
[3]大貫義郎・吉田春夫「岩波講座 現代の物理学 第1巻 力学」, 岩波書店 (1994), pp. 131-139.