Colloquium

複数のテンソル物理量を持つ分子系の液晶相転移

松本 昇吾

12月12日(金) 13時30分

液晶は液体(気体)のように流動性を持ち、かつ固体のように異方性をもつ物質 である。 ネマチック相は棒状分子や板状分子が形成する液晶相の一つで、 分子の重心の位置は無秩序で分子の配向に何らかの秩序がある状態である。 この秩序の程度は秩序パラメータと呼ばれるパラメータにより定量的に記述する ことができる。 geometric order parameterは分子のもつミクロな異方性と、 マクロな量である秩序パラメータとを明確に関係づけるものである。 ランダウ-ドゥ ジャン理論を用いた従来の研究では、 分子がただ1つの異方性をもつとして等方相-ネマチック相転移現象を論じていた が、 geometric order parameterにより分子が複数の異方性(テンソル物理量)をもつ場 合でも、 それらを考慮した相転移現象の解析が可能となった。 今回は特に分子が2つのテンソル物理量をもつ場合の相転移現象を解析して相図 を求める。 この解析はランダウ理論により多項式の最小化問題に帰着できるので、 これを降下法を用いて解く方法を示す。

参考文献:
[1]Shogo Tanimura, Tomonori Koda,
Characterization of geometric structures of biaxial nematic phases, http://xxx.yukawa.kyoto-u.ac.jp/abs/0805.2471(2008).
[2]D.Allender, L.Longa, Landau-de Gennes theory of biaxial nematics re-examined,
e-print arXive: cond-mat.soft/0712.3055(2007).
[3]折原 宏, 液晶の物理, 内田老鶴圃(2004).
[4]竹添秀男, 渡辺順次, 液晶・高分子入門, 裳華房(2004).