Colloquium
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Port Hamiltonian Systemとロボットハンドの動力学
佐藤 一宏
11月14日(金) 13時30分
ロボットハンドの研究において, 物体のつかむ場所をあらかじめ決めないで実際
に動かしてつかむという研究は21 世紀になってから始まったものであり文献の数
は少ない[6]. さらに, 考案されているモデルは全てLagrange モデルであり摩擦を
方程式の中に取り入れるのを困難にしている. 実際に摩擦は転がり摩擦のみで, 指
と物体との接触は点接触であると仮定しているものがほとんであり, これらは現実
を表現しているとは言い難い.
そこで我々はロボットハンドのモデルをLagrangeモデルで立てるのではなく,1992
年にMaschke とvan der Schaft によってSymplectic 構造とPoison 構造を一般化し
た概念であるDirac 構造から導出されたモデルのPort Hamiltonian System と
いうモデルを用いてロボットハンドの研究を進めることにした. Port Hamiltonian
System はエネルギーの収支に注目したモデルであり摩擦が取り入れやすいと考え
たからである. このモデルを用いたロボットハンドの理論の一般的な形は[3] によっ
て与えられてはいるが, 具体的な構造を入れて研究をされているものは今のところ
見当たらない. 今回は特殊な状況であるが,2 次元平面内で直方体を人差し指と親指
で物体の重心の位置を変化させずに回転させながら指と物体を動かすための方程
式をPort Hamiltonian System を用いて示す. またPort Hamiltonian System がど
のような特徴をもったモデルなのかを解説し, 時間の余裕があれば従来のLagrange
モデルであればどのように考えるかも解説する.
参考文献:
[1] C. Secchi, S. Stramigioli, C. Fantuzzi. Control of Interactive Robotic Inter-
faces. A Port-Hamiltonian Approach. Springe r Tracts in Advanced Robotics
Volume 29,2006.ISBN:978-3-540-49712-7.
[2] R. M. Murray, Z. Li, S. S. Sastry. A Mathematical Introduction to ROBOTIC
MANIPULATION. CRC Press,1994.ISBN:0-8943-7981-4.
[3] S. Stramigioli. Modeling and IPC Control of Interactive Mechanical Systems:
A Coordinate-free Approach. Lecture Notes in Control and Information Sci-
ences 266. Springer,2001.ISBN:1-85233-395-2.
[4] A.J. van der Schaft. L2-Gain and Passivity Techniques in Nonlinear Control.
Springer,1999.ISBN:1-85233-073-2.
[5] M. W. Hirsch, S. Smale, R. L. Devaney. 桐木, 三波, 谷川, 辻井訳. 力学系入
門-微分方程式からカオスまで-(原著第2 版). 共立出版,2007.ISBN:4320018478
[6] 有本卓. 数学は工学の期待に応えられるのか. 岩波書店,2004.ISBN:4-00-005526-
7.
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