Colloquium

分子振動の代数理論とその周辺

佐甲 徳栄

7月26日(木) 13時30分

多原子分子の高振動励起状態は,振動モード間の強い非線形相互作用によって,低い振動状態には見られない特異な振動形態を持つと同時に,複雑な振動エネルギー準位構造を有することが知られている.このようなシステムは,分子分光学・化学反応ダイナミクスの研究対象としてのみならず,カオスの量子古典対応を解明するための具体的な研究対象として,非線形動力学の観点からも近年大きな注目を集めている.セミナーでは,原子核理論から登場したU(n)リー代数理論を分子振動に応用することによって,「代数理論が如何に実測のスペクトルを説明し,振動ダイナミクスを抽出するのか」を,著者らが行った理論の拡張を交えながら解説する.
(参考:佐甲徳栄「非線形分子振動への代数論的アプローチ」日本物理学会誌2007年3月号 p.171)