Colloquium

量子情報論における可積分系と標準化逆問題の応用

上野 嘉夫 氏 (Yoshio Uwano)
(公立はこだて未来大学 複雑系科学科)

12月22日(金) 13時30分

量子情報論とりわけ量子アルゴリズムは, 力学的あるいは幾何学的な観点から興味深い点が多い. 今回の発表では,順序付きデータ配列の量子探索問題から出発し,

1) 順序付きデータ配列空間のファイバー空間構造
2) 底空間に自然に入る量子統計多様体構造

について報告する. さらに,底空間を量子情報空間と見た時に「自然」と思われる力学として, 負フォン・ノイマンエントロピーをポテンシャルとする勾配系を考察する.

3) この勾配系は可積分である.
4) この勾配系は,中村によって見出された多項分布族のなす 統計多様体上の或る勾配系の一般化となっており, 2重ラックス括弧表現を許容する.

ことを報告する.

また,少し方向性は違うが,量子情報論分野における標準化逆問題についても話す. 量子情報論は今や夢物語ではなく,その計算素子の開発が盛んに研究されている. ジョセフソン接合を利用したキュビットゲートは,有力な候補であるが, この系はハミルトン系としては摂動調和振動子と見なせる. この系のBirkhoff-Gustavson標準化逆問題についての最近の進展を報告する.