Colloquium

変形体の最適回転 〜3次元への拡張〜 part2

近谷 英昭

11月17日(金) 13時30分

角運動量をもつ物体は回転するが,逆は正しくない. 実際,アメーバなどの微生物は,外力を受けることなく自らの力で変形を繰り返し, 角運動量が0であるにもかかわらず,結果的に回転することができる. これらの生物はできるだけエネルギーを使わずに変形を繰り返し, 自らを回転させているに違いない. そこで,このような生物が変形を繰り返し, 回転することをモデル化することを目標とする.

3次元の物体を扱うに際し,一般の3×3正則行列を用いた線形変形を考えた場合, 計算が非常に煩雑になり,扱いにくいことから, まずは少し簡単な3×3正則行列を用いて計算することにした. 本研究では,「変形体をある角度だけ回転させる際に, エネルギーの散逸が最も少なくなるような変形」を その回転角における最適変形であると定義している. この設定の下で,最適化問題を設定し,これを解いた際に導かれる微分方程式を Runge-Kutta法を用いて解くことが目標である. ここで,「変形体は回転する前と回転した後では同じ形状になっていなければならない」 という拘束条件を満たすように解を構成することが大きな問題であったが, この過程でニュートン法を用いることにより,うまく構成できたことを紹介する. また,ニュートン法を用いたことにより,これまでできなかった 「回転角を指定して最適変形を求めること」が可能になったことも紹介する. 最後に,以上の過程から導出された解を用いて 実際に3次元の物体を変形させたアニメーションをご覧いただく予定である.