Colloquium

不確定性原理の新しい定式化と発展

谷村 省吾

10月5日(木) 15時00分

最近,小澤正直氏が不確定性原理の物理的内容を再検討し, その物理的意義に即して定式化を整え直し, 新しい型の不確定性不等式を証明した. 彼の最終的な答えは, 被測定系と測定系の合成系を一つの量子系として扱い, 測定の過程をも量子力学的な変化として記述し, 「測定値」と「真の値」との関係を調べるという, ある意味,当たり前の道筋をたどって導かれる. しかし,物理学者たちがこの当たり前の定式化と正しい結論にたどりつくまでに 70年以上の年月が過ぎていたのである. この講演では,測定過程の量子論の定式化の概略を説明し, 被測定系と測定系の双対な働きかけとしての測定過程の性質を議論したい.