Colloquium

多様体上の力学系の同期現象に関する不変集合の安定性

千葉 逸人

5月19日(金) 13時30分

壁に掛けた2つの振り子時計について,たとえ初期状態において2つの振り子の位相が 異なっていたとしても,壁を通した微小な相互作用のためにしばらくの後に2つの振り子の 位相が揃うことが起こり得る.この現象は17世紀にHuygensによって発見され, Huygens現象 と呼ばれる.より一般に,2つの同じ力学系に対して微小な相互作用を与えたとき, この結合系の解がもとの力学系の解(同期解)に漸近していく現象は同期現象と呼ばれ, [Fujisaka, Yamada, Prog. Theor. Phys. 69, 32 (1983)]によって初めて微分方程式として 定式化された.

FujisakaらはEuclid空間上の力学系に対し、Liapunov数の解析により適当な条件のもと 同期解が周期解の場合にこれが安定であることを示したが、一般にLiapunov数では カオス軌道が安定かどうかは判定できない。

そこで発表者は双曲型の概念を用いることにより、適当な条件のもと同期解がカオスの場合 にも安定になることを示し、さらにこれを一般の多様体上に拡張した。また相互作用を加える ことにより起こる解の分岐の様子をConleyの指数定理を用いて調べる。