Colloquium

球面における多体系の重心とその運動

柴田 秀哉

4月14日(金) 13時30分

ユークリッド空間における多体系の重心運動の重要な性質として、 全運動量が保存し、かつ0のとき重心は固定されるという性質がある。 この性質を用いると系の平行移動の自由度を減らすことができる。 そこで、このような性質が球面に対しても同様に成立するか、 という問題を考えたい。 これまでは多体系における重心はユークリッド空間でのみ定義できる概念であったが、 1993年、G. A. Galperinにより球面における多体系の重心の概念が導入され、 このような問題を考えることが可能となった。

そこで本報告では、ユークリッド空間における平行移動に附随する 全運動量に対応する量として、 球面上では回転に附随する全角運動量を考えることにより上記の問題を扱う。 すなわち、 「全角運動量が保存するような球面上の多体系において、 全角運動量が0のとき重心はどのような運動をするか」 という問題について議論する。 そのためにまず配位空間の導入から始め、次に系の全角運動量を導出し、 その上で実際に全角運動量が0のとき重心がどのような運動をするかを議論する。 但し、本報告では全角運動量が保存する系を実現するため、 多体系に外力が働かない場合を扱う。

結果、全角運動量が0であっても、球面における多体系の重心は 一般には固定されずに運動することがわかった。 ある条件の下では重心は大円上を運動し、 さらに条件を強めることで重心を固定させられることもわかった。

参考文献:
[1]G.A.Galperin, A Concept of the Mass Center of a System of Material Points in the Constan Curvature Space, Commun.Math.Phys. 154,63-84(1993)