Colloquim

ある大自由度カオス系の、構成の容易な状態アンサンブル

川崎 光宏

5月20日(金) 13時30分

各種の乱流、生体および生態系、人間の経済活動など、大自由度カオス系とし て記述できる興味深い現象は枚挙に暇がない。しかし、非線形性と大自由度性 による完結問題のために、その巨視的性質を記述するには困難がともなう。

一方、平衡状態にある分子多体系という大自由度カオスに目を転ずると、平衡 統計力学により巨視的性質がうまく記述される。平衡統計力学成功のカギは、 状態アンサンブルによる確率的記述にある。巨視的性質を記述するためには構 成の難しい正確な状態確率測度(つまり、自然測度)は必要無く、より簡単に 構成できる状態確率測度(カノニカル分布など)で十分であることがその理由 である。

この平衡統計力学のフィロソフィをもとに、大自由度の散逸カオス系を解析す ることを試みた。具体的には、ある簡単な大自由度散逸カオス系で、巨視的性 質を記述し、かつ、容易に構成できる状態確率測度を得た。大自由度系で探索 の困難な不安定周期軌道は用いていないため、他の大自由度散逸カオス系にも 拡張可能であると考えている。

結論は3月の物理学会で発表したものと同様だが、今回のセミナーでは仮定や 導出過程をより丁寧に議論する。

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