Colloquim

情報伝達効率におけるCPモデルの整合性

井上 武

1月27日(木) 13時00分

現実社会には、様々な形状のネットワークと、その上で起きる力学(遷移過程)が存在する。 例えばインターネット上のパケットフローや配電網上の電力配送、人的ネットワーク上での 伝染病の蔓延などである。この力学を理解する上で重要なのがネットワーク相転移である。 相転移とは、系のパラメータがある条件を満たすか否かでシステムの状態が大きく変化する 現象であり、例えばパケットフローでは通信可能状態が突然通信不可能状態に変化する様な 現象である。このネットワーク相転移をうまく説明するミニマルなモデルの一つにContact Processというものがある。Contact Processとは枝で繋がった隣接二節点間の相互作用過程を 表現する数学モデルである。これまでの研究により、Contact Processは一次元ネットワーク では相転移を起こす事が知られているが、複雑なネットワーク上でも相転移を起こすかは 自明でない。
そこで本研究では、まず様々なネットワーク上でContact Processを実装し、相転移が起こるか 否かを検証した。その結果、今回モデルとして取り上げた二次元ネットワーク、Grobally Coupled Network、Small World Network、Scale Free Network、Cayley Tree Network上で 相転移が起こる事が確認できた。また、パラメータの臨界値でネットワークモデルの接続次元を 定義した所、一つの節点が持つ枝数の平均の大小と接続次元の大小は必ずしも一致しないものの、 Scale Free NetworkとGrobally Coupled Networkにおいては、平均枝数は全く異なるにも関わらず 接続次元が等しい事が分かった。
次に相転移が関係する興味深い現象として、インターネットでパケットが詰まる事によって 長時間かかる通信を取り上げ、インターネットにおけるIPアドレスが定める階層構造を表す Cayley Tree Network上でパケット通信をモデル化した。この時、Contact Processが持つ 「詰まりやすさ」の指標パラメータ値を階層によらず一様にした場合、長時間かかる通信は 再現できなかったが、このパラメータ値を上階層に行くに従い増加させた場合、その増加量が 中間的な値をとりかつ最下層におけるパラメータ値が臨界点近辺である時、長時間かかる通信が 再現可能である事が判明した。

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