Colloquim
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量子探索アルゴリズムの幾何学
日野 英逸
1月27日(木) 13時00分
量子計算は量子力学を動作原理とする新しい計算法であり、非常に活発に研究が行われている。
ランダムデータ探索問題に対して、Groverが提案した量子探索アルゴリズムは従来の計算法では
不可能な高速探索法であり、量子計算が盛んに研究される契機となった成果の一つとして有名である。
現在では、Groverの探索アルゴリズムには様々なバリエーションが提案されている。また、Groverの
探索アルゴリズムを力学系として捉え、その力学的あるいは幾何学的性質を調べる試みも、
Wadati-Miyakeなどで試みられている。Wadati-Miyakeの論文を動機として、Isiwatariは複数データを
配列順序も考慮して探索するGrover型アルゴリズムを修士論文において提案し、アルゴリズムが
生成する探索点列を力学的視点から特徴付けた。
本研究では、Ishiwatariの試みからの新たな展開として、順序付き複数データを探索するGrover型
アルゴリズムの背後に潜む量子情報幾何学的な特徴を明らかにする。まず、Ishiwatariによって
提案された順序付き複数データ(m個のnビットデータ)を探索するGrover型アルゴリズムをレビューし、
続いて、データ空間への左U(2^n)作用を利用してデータ空間から自由度を逓減して得られる空間が、
m次密度行列のなす空間と同型であることを示す。すなわち、データ空間は密度行列のなす空間を
底多様体とするファイバー束構造を持つことを示す。さらに、m次密度行列のなす空間に、データ空間
から密度行列の空間への射影をRiemann沈め込みとするようなRiemann計量を、データ空間のRiemann
計量から誘導し、その具体的な表示を与える。Grover型アルゴリズムが生成する探索点列の
m次密度行列のなす空間への射影が、このRiemann計量に関するある測地線上を動くことも示す。
量子情報理論の視点からは、m次密度行列のなす空間には量子統計理論において重要な量子Fisher計量を
導入できることが知られている。本論文の主結果として、m次密度行列のなす空間をファイバー束構造を
持つデータ空間の底多様体として捉えて得られるRiemann計量と、量子情報理論の視点から誘導される
量子Fisher計量とが定数倍を除いて一致することを示す。さらに、m次密度行列のなす空間上で
von Neumannエントロピーをポテンシャルとする勾配力学系の解のスペクトル変化を担う部分は、
Nakamuraが得たm変数多項分布のなす統計多様体の勾配系の解と一致することを示す。
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