Colloquim

大自由度古典ハミルトン系におけるマクロ変数平衡期待値の相互作用距離依存性

後藤 振一郎

4月30日(金) 13時30分

大自由度ハミルトン系, 特に長距離力相互作用系は 自己重力系やプラズマ物理等の現実の物理に現れ重 要である. しかし, マクロ変数のミクロカノニカル 統計予言値やカノニカル統計予言値に差異が生じ得 ることが知られ, その差異の出現や平衡状態への緩 和課程に関心が持たれている. 我々は, 1パラメーター α ( 0≦α<1:長距離 力系、1<α≦∞: 短距離力系 ) で相互作用距離 を規程し, 空間1次元格子にスピンを配した強磁性 型のXY古典スピンモデル(:α- XYモデル)につ いて上記の関心のもとに研究を行なっている. この モデルは N=∞ (N:自由度)でのカノニカル分配 関数が厳密に計算でき, また正準変数が連続的な値 をとるので古典力学とカノニカル統計の間の関係を 調べるのに適した系になっている. また長距離力系 で2次相転移を起こすことが知られ, 相転移点前後 でのリヤプノフ数等の自由度依存性などの計算もな されている. こういった観点で臨界現象と力学の間 の関係についての研究も行なわれている. 特に今回, マクロ変数である磁化や温度の平衡期待 値について N=∞ カノニカル統計 (解析的結果) と正準方程式 (数値的結果) の双方を比較したので 報告する. α により系が長距離力系に選ばれている 時 (0≦α<1), α→ 1に近ずく時, 有限 N 系における マクロ変数の正準方程式による平衡期待値は, N=∞ でのカノニカル統計予言値への漸近の 遅さに関して非自明な異常性を示す 事を見出した. 今回の発見は2次相転移系において, エネルギー軸 以外に, 相互作用距離軸に対しても非自明な現象の 存在を示唆する. この結果の詳細について議論する.

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