Colloquim

多体系の内部運動によって生じる「遠心力」とクラスターの構造転移ダイナミクス

柳尾 朋洋 氏 (名古屋大学大学院 情報科学研究科 笹井研究室)

6月19日 (木) 13時30分

一般に、多原子分子の大規模な構造変化のダイナミクスにお いては、内部運動の空間のポテンシャルエネルギー地形もさること ながら、この空間が潜在的にもつ計量もまた重要な効果を及ぼして いると推測できる。本発表では、孤立物体は全角運動量がゼロで あっても自身の変形運動のみによって外部の空間に対する向きを 変えることができるという「落下猫の宙返り」効果に関する理論を 足掛かりに、数個の同種原子からなる全角運動量ゼロのクラスター の構造転移(異性化)運動を解析し、内部空間の計量が果たす動的 役割を明らかにする。
より具体的には、主軸超球座標と呼ばれる座標系を用いること によって、クラスターの構造転移運動のメカニズムを系統的に明らか にするとともに、内部空間の非ユークリッド計量に由来する効果を 「democratic遠心力」と呼ぶ内力として導出する。この力は一般に、 系を絶えず押しつぶす(質量のバランスを破る)ように作用する性質 をもっており、原子間相互作用ポテンシャルの力とは独立にクラス ターの集団運動に大きく関与していることを示す。
最後に、Eckartフレームをボディフレームとして用いた際に内部 空間に生じるゲージ場が、ポテンシャル障壁とは異なる新たな反応 の障壁として作用することについても報告する予定である。

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