コロキウム

複数のグラフに依存する結合振動子系の連続極限

伊原亮輔 氏

2018年5月17日(木) 15時00分

総合研究10号館317号室(セミナー室)

グラフ上の結合振動子系は,生物の神経回路,ジョセフソン素子,パワーネッ トワークや合意プロトコルなどに対するさまざま数理モデルを提供し,それら のダイナミクスを理解し,適切な制御を実現することは工学など応用分野にお いても重要な課題である.特に,基礎となるグラフがもつスモールワールド性 やスケールフリー性などの多様性により,非常に挑戦的な問題となっている. これらの系は一般に大きな次元を有し,解析は困難であるが,有力な解析手法 のひとつとして連続極限があげられる.この手法は,大次元の微分方程式系の 解を,ある積分微分方程式の解によって近似するものであり,それによりキメ ラ状態,多重安定性,同期,コヒーレンス・非コヒーレンス遷移など多くの興 味深い現象が調べられている.さらに,理論的な裏付けが,最近Medvedev (2014)によって与えられている.本研究では,ネットワーク上の結合振動子系 の制御への応用を考え,Medvedevの結果を拡張し,より一般的な複数のグラフ に依存する結合振動子系に対して連続極限の手法が有効であることを理論的に 証明する.より具体的には,連続極限方程式の初期値問題に対して,解の存在 と一意性および滑らかさについての結果を与え,確定的なグラフ上とランダム グラフ上のネットワークに対して,グラフの節点数が無限大となるとき,結合 振動子系の解が適当な意味で連続極限方程式の解に収束することを示す.

Last modified: Thu May 10 19:05:24 JST 2018