柴山允瑠 氏
2020年5月21日(木) 15時00分
Zoom会議
2自由度の自励的ハミルトン系や,1自由度の周期的ハミルトン系のポアンカレ写像は面積保存写像になる. ハミルトン系と同じく,面積保存写像も変分構造を持つ.面積保存写像に対して母関数と呼ばれる関数が定まり, その臨界点がその写像の軌道に対応する. 面積保存写像の中でも,円環領域上のツイスト写像と呼ばれる写像の場合は,変分法により 不変な閉曲線の存在が示されている(Aubry-Mather理論).それはKAM理論の変分法版といえるもので, 近年進展している弱KAM理論と呼ばれる分野もその延長線上にある. 一方,面積保存写像の中でもAnosov系やAxiom Aと呼ばれる力学系の場合は,不変円は全く存在しない. そのような力学系に対しては,Markov分割と呼ばれる手法により,不変集合がありその上の力学系は 記号力学系と半共役になることがわかる. 今回は,そのような写像に対する変分法によるアプローチを試みる.Aubry-Mather理論が 適用できる場合と異なり,母関数が無限多価関数となる.各写像の母関数についてどの分枝 を取るかということが,Markov分割から得られる記号列と対応すると思われる. 前半はトーラス上の面積保存写像についてその解説を行い,その後,より一般の シンプレクティック写像の場合について概説する.