コロキウム

グラフ上の結合振動子モデルにおける安定性解析

時森祐樹 氏

2020年1月23日(木) 13時00分

総合研究10号館317号室(セミナー室)

蔵本モデルは,互いに相互作用する位相振動子で構成され,相互作用は枝の重みが均一な完全グラフで表される.枝の重みの均一性を破ることでモデルを拡張することができるが,均一な場合と同じく非同期状態は定常解となる.同期の有無を観るためには非同期状態の安定性が重要となるが,このように拡張されたモデルにおける安定性の解析方法は蔵本モデルからの拡張として提案されている[1].具体的には,振動子数無限の極限を取ることで系の時間発展を連続の式で表し,枝の重みによる影響を線形作用素として表し,この線形作用素の固有値を求める.相互作用の結合定数は固有値によってスケールされるため,拡張モデルにおいて同期転移の臨界結合定数を求める問題は蔵本モデルにおける臨界結合定数を求める問題へと帰着できる.先行研究では枝の重みは非負で考えていたが,今回は負の重みも持つグラフについて臨界結合定数を理論的に求めた.特に,一つの振動子につながる枝の重みの平均値がゼロであっても同期の有無が分かれ得ることを述べる.一方で,蔵本モデル,枝の重みの均一性を破ったモデルの双方において,すべての振動子の自然振動数が同一であれば、完全同期状態も定常解となる.同期現象を解析するにあたっては同期状態の安定性も同様に重要となるため,枝の重みの均一性を破ったモデルにおける安定性ついても研究されている[2].今回は,蔵本モデルと上記の枝の重みが負にもなるモデルについて,完全同期状態の安定性を解析したのでこの結果を報告する.

[1] H. Chiba, G. S. Medvedev, and M. S. Mizuhara, Bifurcations in the Kuramoto model on graphs, Chaos 28, 073109 (2018).
[2] D. A. Wiley, S. H. Strogatz, and M. Girvan, The size of the sync basin, Chaos 16, 015103 (2006).


Last modified: Wed Jan 16 18:03:30 JST 2019